アウトプットするための中国語学習法―「維メソッド」

中国語学習の中で、次のような悩みをもっている方は少なくないとみられます。
・中国語を勉強しているのに、なかなかうまく話せない。・読めるのに、聞き取れない。
・ある程度聞き取れるが、自分から話すことができない。
などなど。
このようなお悩みを持っている方は私の生徒さんの中でも少なくありません。
また、中国語学習者に限らず、英語学習者の日本人にも同じ現象が見られます。
これは非常にもったいない話で、何とか良い方法がないのかと前から考えるようになりました。

ここに、私の経験に基づいて、中国語(外国語)をうまく話せるためのメソッドを考案し、下記のようにまとめていきたいです。


このメソッドを「維メソッド(イーメソッド)」を名付けます。
「維」は私の名前の李維娥から一文字を取っており、「良い(いい)」との発音にも近いので、中国語(外国語)の学習者に「いいメソッド」であるように、との思いを込めて名付けました。今後、私もこのメソッドを実践しながら、修正や補充をしていきたいと考えています。

「維メソッド」の語学環境設定は日本にいる中国語学習者(自国で外国語を学ぶ学習者)は、中国語(外国語)を使える機会が少ない場合としています。
神戸三宮で中国語を教えているので、当中国語教室の受講生をはじめ、中国語学習者に発信していきたいと考えています。もちろん、中国語だけではなく、ほかの外国語にも参考になるメソッドだと考えております。

維メソッド1:集中して聞く

聞く練習と言えば、聞き流すとのイメージが強いのではないでしょうか。ここで言及しているリスニングは集中して発音一つも逃さずにとにかく集中して、「精聴」(傾聴のことではない)することを指します。
この練習をすることにあたって、より適切だと思われる練習材料は日本語の訳文が付いた短文や会話文或いは意味が理解できるレベルの中国語原文の方をお勧めします。手持ちにあるテキストなども有効利用していきましょう。聞く練習をする際はとにかく集中して聞き、文章の意味をきちんと理解(大体ではなくて完全に理解)できるようにしましょう。集中して2,3回聞いて、分からない箇所を探しだしてピックアップしておきましょう。
意味が分からない箇所について、まずは日本語の訳文を一度読んで、分からない単語やフレーズに関しては事前に目を通して発音練習しておきましょう。ただし、中国語の原文を見ない・読まないことにしましょう。練習原稿の意味が完全に理解できたら、「維メソッド二」に移ります。

維メソッド2:自分の口で再生する

中国語原文を見ずに1回目はまず全文を流して、自分の口で再生していきましょう。最後まで進んで、大体何パーセントができたかを自己採点します。
次は、2回目から数回にかけてわからない箇所・発音しづらいところを見つけ出して、止めながら反復練習しましょう。うまく進むためには、発音しづらい単語などを一つ一つピンインで確認して発音できるように繰り返し練習しておくことが大切です。
最後は、1回目と同じ、流している中国語について再生していき、最後まで進み、どのぐらいできたかを再度自己採点しましょう(数パーセント以上をアップするはずです)

ここで強調しているポイントは中国語原文を見ないことです。漢字を見ると、自分の「固定概念」による発音になりがちです。流している中国語をそのまま真似して自分の口で再生していくと、今までの「化石化」したずれた発音の部分も直せる期待ができると思います。
慣れて来たら、普通の声で流している中国語にしっかりついていって自分の口で再生する練習を繰り返します。
ついて行けない場合は止めながら進んでいきましょう。
何回か繰り返して練習ができたら、次の維メソッド三に移ります。

維メソッド3:音読する

中国語原文を見て流している中国語について読みます。
上記のメソッド1、2を経て、発音にまだ自信がない部分や詰まりやすい箇所などがあれば、しっかり中国語原文をみて、発音を聞いて、止めながら正しい発音ができるように音読しましょう。正確に流暢に音読できるように心をかけましょう。暗記する必要が全くありません。ただ繰り返して音読の練習をして、目当ては流している中国語と同じ位のスピードで、流暢に音読できるまで練習してください。目標は原文を見なくても、流している中国語と同じ位の流暢さで自分の口で再生できるように目指しましょう。実際の状況に応じて、「維メソッド2」と順番を変えて練習しても良いでしょう。

維メソッド4: 自分の言葉に変える

維メソッド1から3までセットで反復練習してきたモノを自分のモノをするために、自分の言葉に変えて内容を話してみることが重要です。練習してきた内容を自分の言葉で要約し、言い方を変えたりして、声を出して話してみましょう。言い方があっているかどうか不安な場合は、原文の例文などを真似して話すことをお勧めです。なぜならば、せっかく努力して練習してきたものを、間違って覚えてしまうと練習の意味がなくなるだけではなく、間違いを直るまで時間がかかってしまう場合もあるのです。

それから、環境が整えられる方は自分の声を録音や録画したりしてみて、自分の発音における問題点を発見するのにとても効果的だと考えます。

維メソッド5:話す言語環境を作る

練習してきたモノを使えるように努力しましょう。ただ、覚えるだけでは使い物にならないので、実践して自分のモノにしていくことが大切です。日本で中国語(自国で外国語)を学ぶには言語環境が良いとは言えません。そのためには、自分自身で言語環境づくりをしていく必要があります。

言語環境づくりと聞くと、難しく考える方もおられるかと思いますが、まずは一番身近なことからできる範囲でやってみたらいかがでしょうか。
例えば、話す相手がいない場合の言語環境づくりを考えてみると、こんなことができるのではないでしょうか。
・目に見えてくることを中国語で表現してみる
・通勤電車を待っている中国語初級者なら、「電車に乗る」、「会社に行く」、「人が多い」などなど思いつく簡単な単語やフレーズを中国語で言ってみる
・乗っている時は、流れてくるアナウンスを中国語に訳してみる
・その他
言い方がわからない場合は忘れないうちにメモして、自分で調べたりして、教室に通っている方は先生に確認してもらったりしていきましょう。一日は30分位だけでよいので、続けられるように頑張りましょう。
なぜ「使える言語環境づくり」を強く主張しているかというと、環境が整えたら外国語が自然にできるわけではないからです。私の周りには長年日本に生活している中国人の知り合いがいて、彼らの一部は日本で数年間生活してきていますが、日本語の日常会話もまだできません。その決定的な原因は中国人同士で固まって中国語しか使っていないのです。一方、日本に来てまだ2,3年ですが、日本語がすごくうまい人もいます。彼らは家でも学校でも一生懸命勉強するだけではなく、できる限り環境を活かして話しています。このような事例から見ても、自分自身で言語環境づくりを工夫して言語環境を活かすことが重要だと言えるでしょう。

維メソッド6:とにかく話してみる

とくかく話してみることが言語習得には最も重要ではないかと考えます。ここで紹介した「維メソッド一」から「維メソッド五」まではあくまでアウトプットするためのステップアップです。最終目標はやっぱり勉強してきたモノを話せること、相手に伝わること、相手とコミュニケーションをとれることはいうまでもありません。
話すチャンスがあれば、逃さずに掴みましょう。最近は中国人観光客も大勢いるので、中国人と直接会話できる機会があったら、ぜひ恐れずに積極的に会話してみてください。
ここで特に強調したいことは、練習してきた中国語を「自分の言葉で話してみる」ことです。話してみないと、今までやってきたことが通じるかどうかの前に、話すことができるかどうかさえわからないからです。
グロバール化しつつある現代社会では、話す相手を探すのに、もはや難しいことではなくなり、自分自身の積極性と意欲次第だと思われます。

維メソッドのまとめ
維メソッド一:
集中して聞く
⇒原文を見ずに集中して聞く・内容を理解する
2,3回を聞いて、わからない箇所をピックアップし、意味やピンインを確認してから反復練習
維メソッド二:
自分の口で再生する
⇒原文を見ずに自分の口で聞いた内容を再生する
1回目は止めずに最後まで進んで自己採点。
2回目から数回まではうまく進めない箇所を繰り返し練習
最後は1回目と同じ、全文を通して自己採点
維メソッド三:
音読する
⇒原文を見て流暢に音読する
目標としては原文を見なくても、原文と同じスピードでついて行けることを目指しましょう。
維メソッド四:
自分の言葉に変える
⇒自分の中国語で練習してきた内容を要約して話してみる。
(言い方があっているかどうかわからない場合は原文の言い方や例文をそのまま真似します。)
維メソッド五:
話す言語環境を作る
⇒中国語を使える・実践できる言語環境を自ら作る。
自分が練習してきたモノを使える環境を作って、「多練」して、しっかりと身に付けましょう
維メソッド六:
とにかく話してみる
⇒恥ずかしがらずに、勇気を出して、とにかく話してみる。
(話しているときに、分からない言葉が出たら、素早く別の簡単な単語に言い換えましょう。)

※上記の「維メソッド」はセットではなく、実際の状況に応じて、それぞれの方法を単独で、あるいは順番を調整して使っても良いと考えます。

現代人が言うまでもなく忙しい日々を送っています。
だからこそ、時間を無駄にせず集中して「精聴」・「精練」・「多練」をして、習得したモノを貯めたままにせず、効率よくアウトプットできるようにしておく必要があると思います。

一日20分でも30分でも良いので、ぜひチャレンジしてみましょう。できれば週五回以上続けるとより望ましい結果につなげられます。もちろん、疲れた場合などは、無理せずに聞き流しだけでも、語感を育てることに繋がるでしょう。。

最終的には、自分の中国語で話してみることがとっても重要です。話すことによって、相手に通じたら、とても嬉しい気持ちになり、達成感を味わうことができ、次の学習の努力の源にもなります。通じなかったら、問題点を発見でき、自分の不足な部分もわかるようになるので、次の勉強に学習に役立ちます。良くも悪くもできるだけ話すように努力しましょう。

この維メソッドを継続して実践しておけば、おそらく3ヶ月間を経過すると、あなたの中国語レベルは1ステップに上がるに違いないでしょう。

維メソッドを考えたきっかけ

中国語学習者の多くは中国語を読めるのに、話せないことや、うまく話す自信がないから積極的に話そうとしないことなどを、よく目にします。時々、「李さんは当時どうやって日本語を覚えてきたのですか?」と知り合いや受講生の方に聞かれます。ここでは私が日本語を勉強してきた経験、そして現在中国語を教えている経験の中からこの「維メソッド」をまとめようと考えたのです。

私の日本語学習のエピソード

私は日本に来る前に、中国で一年間学校に通って日本語を勉強しました。その一年間はもっとも上達が速く、達成感が最も高い時期でした。学んだばかりのとても簡単な日本語を使って、ネイティブに話しかける勇気がすごいと時々過去の自分をほめてしまいます。話を通じたら、すごく嬉しくなります。「こんな短い時間でこんなに話せるの?!」と言われると、また喜んでしまい、もっと上手に自由に話せるようになりたいとの意欲が高くなります。このように好循環に回っていました。

今から振りかえてみれば、日本語を勉強し始める頃から、「話す・話してみる」との意欲が強く、「コミュニケーションをとれること」を目標としている私はこれを重点的にやってきました。

日本語を勉強し始めた頃からクラスメートと週3回以上の会話練習を取り組みました。15年間経った今も、当時の練習内容をまるで昨日のことのようにはっきりと頭に浮かんでいます。
私:これはなんですか?
クラスメート:それは犬です。
私:あれは何ですか
クラスメート:あれは猫です。
……

このように、こんな簡単な単純な会話練習からスタートだった。この会話練習があったからこそ、話す自信につながり、今があると言っても過言ではないでしょう。

中国語をうまく話せるには「漢字の副作用」に注意!

周知の通り、中国語と日本語は共通の漢字があり、中国語の日本人学習者(漢字圏の中国語或いは日本語の学習者)には大きなメリットだと言えます。特に書き読みには非漢字圏学習者と比べると、はるかに習得しやすくなり、いいところがたくさんあります。
ただ、中国人である私は日本語を学習している過程で、一つ重要なことに気づき、それは「漢字の副作用」のことです。
例えば日本語の漢字付きの単語に関して無意識的に、「視覚」を優先し、「漢字を見る→中国語の発音をする→日本語の発音をする」とのようなプロセスを経て、単語を覚えようとしました。このような現象は中国語の日本人学習者にも見られています。テスト対策としては悪くないかもしれません。なぜならこのプロセスを経て習得して漢字の単語が忘れにくいのです。ただし、話すと聞くとの視点から見ると、この方法は話すと聞くには、スピードや質に影響を与えてしまいます。よって、同じ漢字圏であっても、言葉で話してコミュニケーションをとりたい方には、「音」重視でやってもらいたいです。

私の中国語の生徒さんからも「漢字の副作用」との現象を見られています。
例えば
・中国語の漢字を見て、日本語の音読みで読んでしまうこと
・発音を集中して聞くことができず、すぐにどんな漢字なのかを発音の前段階で求めたがること
・中国語と日本語が似ている漢字は日本語で書いてしまい中国語を覚えきれていないこと
・中国語の漢字を一々日本語の漢字に当てること
・漢字を見ないと不安だと思うこと。などなど。

「漢字の副作用」の現れ方や症状は様々であり、人によってそれぞれですが、最小限に抑えていきたいものですね。中国語・日本語の学習者はうまく話せるためには、まずは「本当のゼロから学ぶ」との意識をもって、「音」から入口に入って行ってもらいたい。

「コミュニケーションをとれる」を目指して

中国語の声調(声調4つと軽声1つ)は日本人にとって非常に難しいモノであり、ネイティブのような発音を求めてしまうと、かなりの人が中国語を触れる初段階で折れてしまうでしょう。よって、「コミュニケーションをとれる」という目標を持って、発音は8割位を目当てとしていけばよいと私はいつも(受講生などに)提案しています。また、外国語を触れる時期の年齢など、様々な要因によって、発音の完璧さを求めることは決して良いとは言えないと思います。

私自身も日本語を勉強し始める時は、「コミュニケーションをとれる」という目標をもっていました。発音に関しては7~8割になったら、次へ進むようにしました。そして、とにかく話してみようとアウトプットを意識していました。今は普通に日本語を話していますが、ネイティブの日本人から聞くと「中国人・外国人」であることをすぐわかってしまいます。それでも、私は自分の考え方が自分に合っていると思います。完璧さを求めすぎないように、前に進むことができて、そして継続してきたことが良かったと思います。
また、中国は広く、各地方言があり、中国人同士でも地方によってなまりが違い、話している中国語(普通語)は微妙に異なるところがあります。こういう意味でも中国語を学ぶ時には、発音の完璧さを一途に追う必要がないと思われます。

私の受講生から見ても、「コミュニケーションをとれる」を目標にして、発音は8割を目当てにして進む、との考え方は良いと思われます。発音にこだわりすぎる人、完璧さに求めすぎる人は大体初級前半・半ばあたりでやめてしまうケースが多いからです。「発音は8割でコミュニケーションをとれるように」と目指している方のほうが長く続けられ、「生きている中国語」を身に付け、仕事などに活かしています。

一粒中国語教室

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